インタビュー|

「HEINZ BECK」ハインツ・ベック氏が目指す、美味しくて健康になるイノベーティブ・イタリアン

イタリアで“モダンキュイジーヌの革命児”と呼ばれ、世界のガストロノミー界の頂点に立つハインツ・ベック氏。「美食と健康」をテーマに長年研究を重ね、「美味しくて身体にいい」料理を追求する革新的な料理人です。
今回は来日された貴重なタイミングで、KIWAMINO編集部がインタビューを敢行。日本での挑戦や、食べて健康になる料理の秘密を伺ってきました。

画家を目指す少年が偶然飛び込んだ料理の世界

―まずは料理人としての原点ということで、料理の世界に入ったきっかけとイタリア料理との出会いについて教えてください。

料理の世界に入ったのは偶然なんです。今から40年以上前の話になりますが、子供の頃の僕は画家を目指していました。しかし父に「画家では生活できない」と反対されてしまい、レストランでアルバイトを始めたのです。ではこのまま料理をやってみようかなと、そういった偶然から料理の世界に入りました。

もともとは生まれ育ったドイツのトラディショナル料理を作っていました。イタリア料理と出会ったのは、現在もシェフを務めるイタリア・ローマの「ラ・ペルゴラ」の料理長に就任したときです。25年前からイタリアにいるので、もうイタリアでの生活の方が長いですね。

日本で表現する自身の「フィロソフィー」

―ポルトガル、ドバイへの出店に続き、日本では初めて自身の名前のみを冠したレストラン「HEINZ BECK」をオープンされました。日本に出店されたきっかけがあれば教えてください。

初めて日本に来たのは1989年。そのときに日本の文化や歴史、人々の素晴らしさに感動し、いつか自分のお店を出したいと思い描くようになりました。そして幸運なことに、プロデュースのオファーをいただいたのです。日本に僕の店を持つことは長年の夢だったので、本当に嬉しかったです。

―来日の際に印象に残ったところはありますか?

文化や土地の素晴らしさはもちろんですが、日本に来るたびに日本の食材の豊かさに感激しておりました。そこから日本の魅力に取りつかれたのかもしれません。こういった食材を使って自分の料理を表現したい。いつかこの場所に自分の店を持ちたい、という思いを抱くようになりましたね。

貝や伊勢海老・車海老など、甲殻類は本当に素晴らしい。あとは野菜のバリエーションに驚きましたね。中でも山菜の「こごみ」が好きです。季節によってたくさんの種類があるので、日本へ来るたびに新しい野菜を知るのが楽しみです。

―「こごみ」ですか!イタリア料理ではあまり馴染みがなさそうな食材まで詳しくて驚きました。
では日本の「HEINZ BECK」ならではの特徴も、そのような食材が関係しているのでしょうか。

そうですね。やはり東京の「HEINZ BECK」にしかないものは、日本ならではの食材だと思っています。僕の料理のフィロソフィーは、「美味しく食べて健康になる」。つまり消化の良さや胃に負担をかけないなど、そういったものを考えながら料理を作っています。
これが唯一、僕がプロデュースする世界中のレストランで共通していること。使う食材などそれ以外のことは個々のレストランで違いますが、この「美食と健康」というフィロソフィーは統一されているんです。

―どのようにご自身のフィロソフィーを表現されていますか?

料理を表現するというのは、テクニックだけではできないことなんです。クリエイティブな発想をするためのベースには、食材を見分ける知識が必要。そして伝統的で革新的な調理テクニックを使って、全体のハーモニーが完璧になった料理を仕上げる。そういったバランスですね。すべてが整ったところで一つの料理が完成し、ようやくお客様に提供できるようになるんです。料理を常日頃研究し、食事に来ていただいたお客様に体感していただけるようにしたいと思います。

―では「HEINZ BECK」ならではのイタリア料理の楽しみ方があれば教えてください。

私の料理はイノベーティブなイタリアンで、大勢の方がイメージするイタリアンとは少し違うかもしれません。今まで食べたことのない食感や食材の組み合わせ、想像を超える味や香りなど。こういったものを料理ごとにお楽しみいただけると思います。味のサプライズや今までには想像もしなかったような美味しさというのを、こちらで味わっていただきたいです。

メニューは2か月ごとにすべて変えています。その短い期間のみ最高と言われる旬の食材を使うためです。食材もただ単に出すということではなく、他の食材との面白い組み合わせだったり、お客様に驚きと感動を与えるようなものに仕上げて提供しています。訪れるたびに新しい発見があるので、ぜひ季節ごとに楽しんでいただきたいですね。

「私たちの身体は食べたものからできている」研究者として提供する一皿への想い

―2019年11月7日でオープン5周年を迎えた「HEINZ BECK」ですが、新たに挑戦したいことがあれば教えてください。

私たちの身体というのは、食べたものからできています。ですから僕は料理だけではなく、医学に基づいた料理の研究を20年前から行っているんです。
そういった研究成果を反映させたものを、東京のお客様にも食べていただき、喜んでいただきたい。そのためには東京でもっと新しい料理、新しいメニューの開発をしていきたいと思っています。それが挑戦といいますか、やっていきたいことですね。

最近僕が他の料理人に対して思うのが、似たような食材ばかりを一人のシェフが使っていること。そして何年も何年も同じような料理ばかり提供していることです。世界にはたくさんの食材があります。ですから一人の料理人がもっと食材や栄養の勉強をして、いろいろな食材を使うべきだと思いますし、僕も自ら東京で実践していきたいと思っています。

―日本に来られるたびに新しい食材を調べて、料理に反映する。飽くなき追求心が伝わりました。

僕の料理を食べた後、お客様の身体の調子が良くなったり悪くなったりする。そういう責任のある仕事をしていると思っています。料理人というのは美味しい料理を提供するだけではなくて、食べた方の健康を考えることも仕事です。それを実現させるには、日々の勉強がベースになります。

最近は勉強をしていない料理人が多すぎると感じています。僕は20年前から料理人は料理だけではなく、人間の身体の仕組みや健康など、医学的なことも学ぶ必要があると思っていました。ですから僕の料理にはそういった医学的な勉強の成果も反映されているし、そのベースがあるからこそ本当の美味しい料理が出せると思っています。

―まるで料理人というより、研究者やお医者様のような考え方ですね。

2年前に、イタリアアレッツォ大学で自然療法学の名誉資格を取得しました。昔から栄養学や医学的な観点から見た料理について研究していましたが、長年の研究が一つの形となり、自分も教授になれたということで非常に嬉しい出来事となりました。

いくつか本も出版しています。一番最近出したのは、糖尿病についての本です。イタリア政府からも表彰を受けました。もちろん非常に専門的な分野になりますので、私一人ではなくローマ大学の医学教授たちとチームを組んで研究しておりました。これからももっと研究を続けて、それを料理に反映していきたいと思っています。

―最後に、一休.comのユーザーに一言メッセージをお願いします。

一休さんを通して、たくさんのお客様に僕の料理を体感していただきたいと思います。
壁一面が窓なので紅葉や桜など1年を通して景色も美しいですし、2か月ごとにメニューも変わるので、ぜひ季節を変えてお越しください!

編集後記
料理を作ることに留まらず、食べた方の健康までを考えるハインツ・ベックシェフ。料理界のさまざまな賞を受賞するトップシェフの顔と、料理人の枠を超えた研究者としての一面を垣間見ることができた貴重なインタビューとなりました。

**********************************
Heinz Beck(ハインツ・ベック)氏 プロフィール

1963年  ドイツ フリードリヒスハーフェン生まれ
      ドイツやスペインで修行
1989年  初来日 横浜フードフェス
1994年  ローマのホテル内に開業した「ラ・ペルゴラ」総料理長就任(現在は兼総支配人)
1999年  ガンベロロッソ ガラディナー 10種のフォアグラメニューを提供
2000年〜 ローマ「ラ・ペルゴラ」ミシュラン2つ星
      医者との共同研究がスタート。高血圧、肥満、子供のためのレシピなどを考案。
      2017年からは女性のための食事法の開発に取り組む
2005年  ローマで初 ミシュラン3つ星を獲得
2014年  アジア初、東京・大手町に「HEINZ BECK」をオープン
2018年  アレツォ大学 自然療法学 名誉資格譲与

ガストロノミーイタリア料理

HEINZ BECK

東京メトロ千代田線 大手町駅 D6出口直結

15,000円〜19,999円

東京・大手町のイタリアンファインダイニング「HEINZ BECK」の記事をもっと読む

名店紹介「ハインツベック」。大手町で、イタリアンの名店が届ける比類なき世界観

三つ星シェフの名を冠する「Heinz Beck」に潜入!上質なイタリアンを楽しむ開放的な個室を取材

アクセス
住所: 東京都千代田区丸の内1-1-3 日本生命丸の内ガーデンタワー M2F (入口は1Fにてご案内)

misaki

一休.comレストランの元営業。300店舗近いレストランを担当したのち、もっと世の中に宿やレストランの魅力を発信したい!という思いから、KIWAMINOの編集に。よく食べ、よく遊び、よく働くがモットー。全国各地を飛び回り、インタビュー記事を通してシェフの熱き想いをたくさんお届けできるよう日々奮闘中です。
【MY CHOICE】
・最近行ったお店:LATURE/TAKAZAWA/銀座 きた福
・好きなお店:オテル・ドゥ・ミクニ
・自分の会食で使うなら:六雁
・得意ジャンル:フランス料理
・好きな食材:赤身肉/鴨/海老/いくら

このライターの記事をもっと見る
link

この記事をシェアする