インタビュー|

東京・表参道「メゾン・ド・ミュゼ」福永敏之氏インタビュー。クラシカルな空間で愉しむ温故知新のフランス料理

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東京・青山の閑静な住宅街に佇む「メゾン・ド・ミュゼ」は、歴史ある登録有形文化財の西洋館で美食を楽しめる一軒家フレンチレストラン。1981年の創業以来、多くのゲストを迎えてきた「ロアラブッシュ」から、2021年7月にリニューアルオープンしました。
今回「KIWAMINO」では、リニューアルに伴って新たに料理長に就任された福永敏之シェフにインタビュー。料理長としての想いや意気込み、「メゾン・ド・ミュゼ」ならではの料理のこだわりなどを語っていただきました。

※本インタビューは、2021年11月18日に感染症対策の上で行いました。

「メゾン・ド・ミュゼ」としての新たなスタート 

-“名は体を表す”と言いますが「メゾン・ド・ミュゼ」という店名は、まさに佇まいや空間を表していますね。名前にはどのような想いが込められているのでしょうか?

建物自体に歴史があり、大正後期から十数年かけて個人の私邸として建てられ、昭和9年(1934年)に完成しました。外観はチューダー様式の特徴が見られ、館内のあちこちにアール・デコの特徴をあわせ持っています。現在では120点以上のエルテコレクションを携え、美術館の中で食す空間へと変わりました。
これだけ歴史のある洋館のグランメゾンは数少なく、とても希少なもの。美術館さながらにエルテコレクションを愛でながら食事を楽しんで頂ける空間である事から、「美術館で食す」空間を体現する名前として「メゾン・ド・ミュゼ」と名付けました。

アール・デコを代表するエルテコレクションと、アール・デコの特徴のある空間。その親和性の中で、見た目も美しいフランス料理を、「温かいおもてなし」とともに味わう非日常感を楽しんでいただきたいです。メインダイニングの他に個室が8室あるので、個人の邸宅に招かれたような気持ちでお越しいただければと思います。

文化継承を志し、現場回帰を果たした新料理長・福永敏之シェフ

-福永シェフはリニューアルに伴って料理長に着任されたとのことですが、これまでのご経歴を教えてください。

調理師学校を卒業後、料理人としてずっとフランス料理をやってきましたが「メゾン・ド・ミュゼ」に来る前は、調理師学校の教員として育成を行っていました。
「卵からヒヨコになるまでを学校で、その先を現場で」という想いで、一旦自分は現場から離れて、教員として人材育成に約4年携わってきました。
生徒達と日々向き合う中で、伝統の料理や文化を、これからを担っていく若手達に継承していかなければいけないと強く感じるようになり、そんな時に「メゾン・ド・ミュゼ」での料理長のお話しをいただいたので、現場回帰を決意しました。

-料理長のオファーを受けた時には、どのようなお気持ちでしたでしょうか?

一番には「育成の場所は、やはり現場かもしれない」という気持ちでした。まして、グランメゾンの店だったので、自分の力を注ぎ込める良いチャンスだと思い、有難く感じました。その一方で、歴史ある空間だからこそ、「覚悟」が必要だと感じました。

ただ、小さなお店では実現できない=チームの人材育成も含めて色々な人との繋がりの中でChefをする事が残された料理人人生として有益ではないかと考えるようになったんです。
「約40年続くレストラン」ということへのプレッシャーも感じましたが、ここで料理を召し上がるお客様が「美味しいね」と満足して下さること自体がチームの力になりますし、若手のスタッフに伝統の料理や文化を継承することもできる。
現場で人材育成をしながら、チーム全体を盛り上げていく中で、料理界への貢献が微力ながら出来たら…と思い、ご縁を繋げる事としました。

-「チーム」という言葉がキーワードのように感じました。これからどのようなチームを作っていきたいですか?

先ずは「ここを選んで良かった」「みんなで楽しく作り上げたい」という雰囲気を作ろうと心がけています。
一度強く落ち込むと、辞めたいという自分の気持ちに勝てない若い世代が多いように感じてきました。それを乗り越えられる強い若手を育てたいですし、そのためにも、毎日色々な発見があってワクワクするような気持ちの中で、キッチンもサービスもチーム全体として同じ方向を目指せる現場を作ろうと考えています。

美術館のような空間で楽しむ温故知新を感じるフランス料理

-福永シェフを料理長に迎え、より一層、料理に力を入れていらっしゃることと思います。「メゾン・ド・ミュゼ」の料理の特徴を教えてください。

空間とお客様にそっと寄り添えるような「親和性のある料理」が一番の特徴です。
歴史ある空間で伝統料理を大事にしながら、決して重たくなりすぎないよう、伝統料理と現代のエセンスを交えながら提供しています。メインディッシュだけはクラシカルな料理を楽しんでいただけるようにコースを組み立てています。
見せる料理ではなく、しっかりと食材を活かし、何を食べたのかがちゃんと分かるような、シンプルでお客様に伝わる“この場所だからこその料理”を心掛けています。

-スペシャリテの料理はどのようなものがあるのでしょうか?

スペシャリテは特に伝統や文化を大事にしたいと考えているので、鴨のフォアグラを使った料理を提供しています。
フォアグラは様々な調理法や味付けができるフランス料理の技術を魅せる事が出来る食材。季節をお皿に表現しながら、様々なアプローチでコースの中に取り入れています。

例えば、「鴨フォアグラのコンフィ 季節のコレクション」がそのひとつです。フォアグラを下味付けして、フォアグラの脂の中でじっくりと火を入れる、一見シンプルなものですがテリーヌとは違うねっとりとした食感と香りに仕上げる、言わばテクスチャーを味わって頂く一皿です。
形を崩さず丸のままコンフィにするのは最近見かけなくなりつつある調理法です。伝統継承のためにも温故知新の精神を持って、現代風に洗練された形で楽しんでいただけたらと思い表現しました。

今挑戦しているのは、ガトー仕立てのような高さのあるフォアグラ料理です。
ケーキのイメージが強いオペラをフォアグラで表現したいと考えました。彩りと香りで赤いビーツを差し色にし、ゼリーで包んだフォアグラの上にトリュフを乗せた「シュルプリーズ」というクラシック料理からのインスピレーションを得て、上にトリュフを置いています。今後、もっと洗練された形にして、新しいスペシャリテとして登場させたいと考えています。

-インタビュー前に料理をいくつか拝見しましたが、料理としての見た目はもちろん、盛り付けにもとてもこだわりを感じました。

ありがとうございます。美味しさの表現としてデッサンするようにしています。それぞれの食材と相談しながら、日本料理の色使い、五色(ごしき)を意識し盛り付けと食べ合わせを考え、作りこんでいます。

唯一無二のグランメゾンとして「メゾン・ド・ミュゼ」のこれから

-「メゾン・ド・ミュゼ」の今後の展望や、今後の目標をお聞かせください。

以前はご披露宴やパーティーなどの社交場としての評価が強かった様ですが、僕達としては、レストランとしての価値や魅力をより高めていきたいと考えています。この空間で食事を楽しむ特別感をたくさんの方に享受して頂きたい、それこそが空間を生かす僕たちの使命だと。

温故知新の精神で、この場所だからこそできる料理を継承していきながらも、お客様に寄り添う「来てよかった」と喜んでいただける料理であることが大事だと確信しています。お客様が食べた時にどこか安心するような料理、僕たちにとって身近な、季節感のある日本の食材をフランス料理に取り入れることも、その一つのアプローチとして心がけています。

また、新しい展開として、当店のパティシエチームが中心に作り上げるグルメブティック「メゾンドミュゼ―アフィニテ―」を当店敷地内にOPENさせました。
レストランチームである強みを活かし、西洋菓子だけでなく毎日焼き立てのクロワッサンやオリーヴパン、パテやパスタソースなどのトゥレトゥールなどもご用意しております。ぜひ、こちらもお立ち寄り頂ければと思います。

出来るだけ、たくさんのお客様と出会いたい、お話したい。この時世だからこそ、レストランだから提供できる「癒し」をご提供していきたく考えています。もうひとつの邸宅としてレストラン「メゾンドミュゼ」にぜひ、お越しください。

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福永シェフプロフィール
1971年千葉県出身
都内でのフランス料理店を皮切りに、クイーンアリス晴海、銀座和光アルペッジオなど
シェフを歴任。母校である新宿調理師専門学校の教員を経て2021年「メゾンドミュゼ」
料理長に就任。
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フランス料理

メゾン・ド・ミュゼ

東京メトロ銀座/千代田/半蔵門線 表参道駅 B3出口から渋谷方面へ。1階に「MaxMara」が入っているビルのある交差点を左へ。「小原流会館」前の信号を渡り、ゆるやかな下り坂を直進。↓つづく

20,000円〜29,999円

【編集後記】
調理師学校の教員を経て、約40年続く老舗レストランの料理長として現場復帰を果たした福永シェフ。現場と学校という2つの地を経験されたシェフだからこその視点は、スタートを切ったばかりのチーム「メゾン・ド・ミュゼ」にとって大きな力となることでしょう。
若手達を育成していくと同時に伝統や文化を継承していきたいという意気込みや、この場所ならではの特別感とともにお客様に料理を楽しんでいただきたいという想いを強く感じたインタビューでした。

Mika Tsuboi

一休.comの宿泊営業アシスタントから編集部へ。ワインと一緒に、美味しいものを少しずついただくのが最高の幸せ。こぢんまりとしたフレンチやネオビストロがお気に入り。
最近は日本ワインにも興味を持ち、旅先で出会った好みのワインを自宅で愉しむのが日課。パンやスイーツなどにも目がなく、週末にはカフェやパン屋巡りをし日頃の情報収集も欠かさない。
・最近行ったお店:Restaurant Fermier/六雁/Varmen
・好きなお店:広尾 ぺりかん/RESTAURANT MAMA./LATURE
・得意ジャンル:ビストロ
・好きな食材:ジビエ/蛤/伊勢海老/キノコ

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